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2007年09月17日

オムニムーバー始動

最近、僕のブログはこの話題ばかりですが、先日のテクノフェア名大で一般公開したAT9号機を、今回はビデオを交えてご紹介します。
無論、ビデオはSynvieにてご覧ください(以下のイメージをクリックするとSynvieに移動します。該当するシーンが終わるとビデオが一時停止しますので気をつけてください)。

8号機までは、完全に僕の設計と研究室のメンバーの手作り(東急ハンズでアルミの加工をやってもらいました)だったのですが、この9号機は、(株)ニチエイという名古屋の会社に本体の設計と製作を依頼しました。
これは、全方位移動という機能を実現するために、機械設計の専門家の経験とスキルが必要だったからです。
ただし、センサー(市販されているものを使用)に関連するデバイスの作成や、制御と通信などのためのソフトウェアの開発は、これまでと同様に僕たちが行っています。

9号機の主な特徴は、オムニムーバーつまり全方位移動体であること、Wiiリモコンを操縦インタフェースにしていること、非搭乗時にはWiiリモコンを使って直感的な遠隔操作ができること、バーチャルウォールシステム(走行範囲の柔軟な制限機構)を搭載していること、カメラや他のセンサーを用いた体験キャプチャマシンになっていること、です。

近いうちに、全方位をスキャンできるレーダー(レンジセンサー)を使って、9号機をぶつからずに安全に移動できる乗り物にしていく予定です。

名古屋大学長尾研究室で研究開発中の個人用知的移動体ATのデモビデオをご紹介します。

AT 9号機 紹介ビデオ : 00:16 - 00:18
ATとは、Attentive Townvehicle(つまり、気配りする街車)の略称です。その9番目の機体なので、AT9号機と呼んでいます。

AT 9号機 紹介ビデオ : 00:22 - 00:56 AT 9号機 紹介ビデオ : 00:22 - 00:56
これは、オムニホイールと呼ばれる複合車輪を利用した全方位移動(ただし、今のところ前後左右斜めの8方向に限定しています)のデモです。車体の下に非平行に取り付けられた車輪がオムニホイールで、その上の黒い部分が750Wのサーボモーターと減速機です。

AT 9号機 紹介ビデオ : 01:10 - 01:46 AT 9号機 紹介ビデオ : 01:10 - 01:46
これは、RFID(無電源ICチップによるID認証)タグを利用してATの活動領域を制限するデモです。この映像では非常にわかりにくいですが、天井の黒い点のあるところにRFIDタグが接着されています。

AT 9号機 紹介ビデオ : 02:06 - 02:28 AT 9号機 紹介ビデオ : 02:06 - 02:28
これは、ATの前後左右に取り付けられた無線ネットワークカメラを利用した映像と音声による体験記録のデモです。ネットワークにつながった遠隔のPCで4方向カメラの映像をモニタリングできます。

AT 9号機 紹介ビデオ : 02:36 - 02:58 AT 9号機 紹介ビデオ : 02:36 - 02:58
Wiiリモコンと独自に製作した赤外線受光デバイス(IRデコーダ)を用いた直感的な遠隔操作(といってもATから5m以内での操作)のデモです。この拡張デバイスをリモコンにプラグインすると、「乗車運転モード」が「遠隔操作モード」にスイッチして、遠隔操作が可能になります。

AT 9号機 紹介ビデオ : 02:58 - 03:12 AT 9号機 紹介ビデオ : 02:58 - 03:12
ATから5m以内ならば、どの方向からリモコンを向けても(ただし、現在のところ8方向に限定)、ATはその方向に、旋回することなく接近し、自動的に停止します。

AT 9号機 紹介ビデオ : 03:12 - 03:32 AT 9号機 紹介ビデオ : 03:12 - 03:32
また、リモコンを向けながらAボタンを押すと、ATはその時のリモコンとの距離を記憶して、その距離を維持するように動きます。見えない棒で押したり引いたりしているような感じです。

AT 9号機 紹介ビデオ : 03:32 - 03:46 AT 9号機 紹介ビデオ : 03:32 - 03:46
さらに、Aボタンを押しながら、リモコンを左右に振ると、その向きにATが旋回します。これはWiiリモコンの加速度センサーを利用しています。

AT 9号機 紹介ビデオ : 03:46 - 04:12 AT 9号機 紹介ビデオ : 03:46 - 04:12
現在のATプロジェクトのメンバーが出演しているおまけ映像です。ちなみに、ATプロジェクトのURLは、http://www.nagao.nuie.nagoya-u.ac.jp/projects/at.xmlです(近いうちにアップデートする予定)。

投稿者 nagao : 20:42 | コメント (222) | トラックバック

2007年09月03日

ATとWii

ようやくAT9号機が動き出しました。
この一か月間はほとんどそのためだけに費やされました。
そのため、このブログもまったく更新できませんでした。

8月上旬に初めて研究室に持ち込まれた9号機はぴくりとも動かず、まったくどうしようもない状態でした。
その原因を一つ一つ、シーケンサやサーボドライバーなどの部品の製造元と相談して解決していきました(まだ解決されていない問題もいくつか残っています)。

以下は9号機の写真です。
4台のサーボモーター(+減速機)が巨大です。
車輪はオムニホイールです。
また、9号機はWiiリモコンを主要なユーザーインタフェースデバイスとしています。
これは、広く一般に普及しているゲームコントローラを使うことでなじみ易くすることと、ユーザーが自分専用のコントローラを持ち歩いて乗り物に接続することで、操縦に個人性(適切な速度やナビゲーションにおける嗜好性など)を反映させることができる、という効果があります。

at9.jpg

さて、今回9号機に実装されている(されつつある)機能は以下の通りです。

1.Wiiリモコンをコントローラとして(ハンドル部に装着して)操作する8方向移動およびその場回転
2.やはりWiiリモコンを使って(今度は手に持って)行う直感的な遠隔操作
3.RFIDタグとリーダーを用いて行う自動走行
4.9号機の前後左右に取り付けられた無線カメラを利用した4方向同時モニタリング

1は9号機の基本動作です。
9号機は原理的には任意の方位に平行移動できるのですが、4個のサーボモーターの制御がうまくいってなくて、とりあえず、その構造上、比較的簡単に動ける8方向に限定しています。
ちょうどWiiリモコンの十字キーも上下左右斜めの8方向を指定できるようになっているので、これらと対応付けています。
Wiiヌンチャクのアナログスティックや一般のジョイスティックなら任意の方向を指定できるので、ある程度問題が解決したらそれにも対応してみたいと思っています。
ちなみに、その場回転は+-ボタンを押して操作します。
+は時計回り、-は反時計回りになります。

以下の写真はハンドル部に装着したWiiリモコンです。

at9-wii-remote.jpg

2はWiiリモコン内蔵のイメージセンサーと自作した拡張デバイスを組み合わせて、ほぼボタンを使わないで行う操作です。
拡張デバイスには赤外線受光素子が組み込まれていて、IDをエンコードした赤外線を受信してそのIDをデコードすることができます。
9号機の周囲に固定された赤外線LEDを利用して、ATから見たWiiリモコンへの距離と方向を認識することができます。
これによって、より直感的な遠隔操作が可能になります。
たとえば、WiiリモコンをATに向けるとATが自動的にそばに寄ってきて止まります。
また、ユーザーが「見えない棒」を使ってATを引き寄せたり遠ざけたり、左右に振ることで回転させることができます。

以下の写真は、僕が腕に拡張デバイスを装着してWiiリモコンをATに向け、ATを近くまで移動させているところです。

at9-rc1.jpg

at9-rc2.jpg

3は通信距離が比較的長いとされるUHF帯(860MHz~960MHz)のRFID(Radio Frequency Identification)タグとリーダーを用いて、ATが安全に走行できる領域を比較的容易に設定し、人間が細かい操作を行わなくても自律的に走行できるというデモです。
これは、バーチャルウォールと呼ばれる、掃除機ロボット(有名なところではiRobot社のRoomba)が家具などを傷つけないようにするための目に見えない壁の話に似ています。
将来は、人間と乗り物の活動エリアを柔軟に切り分けて、乗り物専用のエリアに人間が生身で侵入すると警告音が鳴り、乗り物は人間専用エリアには侵入できないような仕組みが実装されると思います。
RFIDを用いる必然性は特に無いのですが、タグが無電源で貼る場所を選ばない点(実は多少制約があります)や僕たちにとってなじみ深いデバイスであること(僕が最初にRFIDを研究に使ったのは1995年のことです)から、これを採用しました。

4は以前にAT7号機で利用した無線LAN内蔵ネットワークカメラ4台を今回も利用して、9号機の周囲4方向を同時に撮影して表示するというものです。
この手のカメラは電源をかなり消費するので、ATのようなバッテリーをたくさん積めるような移動マシンは適していると言えるでしょう。
送信された映像と音声は個人の体験をキャプチャするのに利用されます。

以上の仕組みの一般向けのデモを今週の金曜日に名古屋大学で行います。
詳しくは、テクノフェア名大のこちらのページをご覧ください。

興味を持たれた方は、是非、新しいATを体験しにいらしてください。

投稿者 nagao : 20:02 | コメント (234) | トラックバック