« オムニムーバー、人をよける | メイン | ビデオアノテーション研究には未来があるか »

2009年02月28日

フォーカル・ポインタ

複数の人間が、自然に同じところに注目するような点をフォーカル・ポイント(focal point)と呼ぶ(注視点(focus of attention)とも呼ばれる)。

たとえば、川で隔てられた2つの街があって、その川には一本の橋がかかっているとする。
その地図を複数人に渡して、「もし突然、2つの街のどちらかにいることがわかっている複数の友人と待ち合わせをすることになったとしたら、どこで待ち合わせをしますか?」という質問をすると、大部分の人は橋の両端のどちらかの場所を示すらしい。
それは、2つの街のどちらにいるかわからないから、結局行き来しなければならなくなると思うので、それなら橋のどこかで待っているのが妥当だし、橋の中のどこかよりは特徴のあるところで待つのがよい、ということらしい。
機能的な側面と視覚的な側面の両方を考慮しているようだ。
このような場所は地図上のフォーカル・ポイントとなりうる。
ちなみに、この問題に関しては、今はみんなケータイを持っているのだから、連絡を取り合って適切な場所で待ち合わせをすればいい、という意見もあるだろうけど(僕はケータイを持っていないのでこのやり方だと仲間外れになってしまう)。

僕は、このフォーカル・ポイントの性質を会議でのプレゼンテーション(およびその後の検索)に応用できないものかと考えている。
つまり、スクリーンに投影している資料の中で多くの人が注目する(してしまう)点を見つけて、その点に関するトピックを集中的に議論すると、効果が上がるのではないかということである。
視線認識でもやらないと誰がどこを注目しているかわからないのではないかと思われるかも知れないが、僕たちのミーティングでは参加者全員がポインタ(つまりWiiリモコン)を持っているので、要所要所でポインタを使って自分の注目しているところを示す、という手がある。

そして、複数人の視点が集まっていることをわかりやすくする仕組みとして考えたのが、合体ポインタである。
他の参加者の注目しているところに自分も注目していることを示すために、ポインタを合体させて、より目立つポインタに変化させる(少し派手な色になるとか、サイズが大きくなるなど)のである。
ポインタを合体させる操作は、ポインタを重ねてボタンを押すだけである。
ポインタを分離させるときは、もう一度ボタンを押せばよい。

合体に参加しているポインタが多いほど、アピール度はより高くなっていく。
ポインタの数が参加者の半数を超えた場合に、合体ポインタの指す場所は、フォーカル・ポイントとして記録される。
会議後に、ファーカル・ポイントの存在しない資料は重要ではないとして、会議資料のエッセンスが自動抽出される。

ファーカル・ポイントを示しているポインタをフォーカル・ポインタと呼ぶ。
フォーカル・ポインタとなった合体ポインタは、合体に参加しているすべてのポインタの移動ベクトルの平均値によって位置が決まる。
つまり、合体ポインタの参加者全員が異なる方向に動かそうとするとポインタはほとんど動かない。
そのストレスから、合体を解除して、他の場所を指すものが続出して、その結果、最初とは異なる場所にフォーカル・ポインタを形成することもある。


このようにファーカル・ポイントは機械的に決まるのではなく、複数参加者の自発的行為から発現する一種の集合知によって決まるのである。

このフォーカル・ポイントが本当に議論の効率化に貢献するのかどうかは、まだわからないが、フォーカル・ポイントが見い出せないようなプレゼンテーション資料はやはりどこかがまずいのではないか、という気がする。
高橋メソッドだか何だか知らないけれど、やたらと字を大きくしてスライドの枚数を稼ぎ、インパクトを求めるあまり、きわめて断片的で文脈を捨象した情報しか表示しないやり方は僕は嫌いだけれど、書いてあることがバラバラでどこに注目したらよいのかよくわからないようなスライドもやはりダメだと思う。

一つのスライドに必ず一つのフォーカル・ポイントがあり、そこにはそのスライドで最も重要なことが書かれている、というのが理想である。
無論、その重要なことを補足する情報が、フォーカル・ポイントの周辺にできるだけ簡潔に書かれているのがよいだろう。

フォーカル・ポイントをうまく誘発できる方法がわかったら、きっと効果的なプレゼンテーションスライドの作成法や、そのスライドを使った効果的なプレゼンテーション法がわかってくるだろう。
その辺のことが明確になったら、いわゆるハウツー本でも書いてみようか。


ところで、複数ユーザーがWiiリモコンをポインタデバイスとして使えるようにする仕組みは、もともと僕のいる研究室の学生が作ったものだけど、かなりやっつけで作ってあってわかりにくいので、ソースコードを書き直して公開しようかと思っている。
ただ、これに関して引っかかるのは、プログラムを公開することで任天堂に不利益にならないか、ということである。

Wiiリモコンのリバースエンジニアリングに関するサイトはいろいろあって、僕たちも参考にしているのだけど、WiiリモコンをPCで使えるようにすることは任天堂のビジネスを拡大させることにはならないと思われる(人づてに聞いたところ、Wiiリモコンだけが売れてもあまりうれしくないらしい。まあ、当然だけど)ので、下手に煽って任天堂を怒らせ、Wiiリモコンの仕様が大きく変更されたら面倒なことになるなあ、と思っている(たいていの場合、企業がこういうことをすると、ハックするユーザーとの間でいたちごっこになる。最近このようないたちごっこが起こった例として、AppleのiPhoneに関して、App Store以外からダウンロードしたソフトウェアを実行できないようにするロック機能をユーザー側で解除するJailbreakがある)。

画期的なミーティング支援システムを僕たちが開発して、それを任天堂のライセンス付きで市販することができたら(無論、大学の研究室が直接、製品を販売することはできないけれど)、IT関連技術(ゲームではなくビジネスソフトウェア)を何でもかんでもアメリカから輸入する状況を少しぐらい変えられるのではないかと思っている。

投稿者 nagao : 2009年02月28日 11:46

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nagao.nuie.nagoya-u.ac.jp/mt/mt-tb.cgi/164