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2009年09月28日

第参回天下一カウボーイ大会雑感

先月末に、秋葉原で「第参回天下一カウボーイ大会」というイベントが開催されました。
このイベントはアスキーのサイトでも紹介されています。

「天下一」はラーメン屋さんのことではなく、「ドラゴンボール」からの引用だと思いますが、「カウボーイ」って何だろうという感じですね(IT系のイベントという気が全然しませんが、まあこれでもよいのでしょう)。
これは、知り合いの清水亮さんが代表取締役社長を務める株式会社ユビキタスエンターテインメントと週刊アスキーの共催です(たまたま見た、今週号の週刊アスキーにこのイベントの記事がありました)。
僕は清水さんに頼まれてそれに出ることになったのです。

僕は、前回のエントリーで触れたATの話をしようか、Synvie(動画アノテーションとその応用)の話をしようか迷った挙句、研究室で運用している会議システムの話をすることにしました。
その理由は、「テクノロジーがそれを使いこなそうとする人間を賢くすることができる」ことを具体的に説明して、ただ面白いからやるというだけでなく、人類の未来のことを考えた発明を目指して欲しいと思ったからです。

サイエンスやテクノロジーの面白さを伝える話でも、アートやエンターテインメント寄りの話でもない、小さいアイディアでも積み重ねていくことに大きな意味があって、人がより賢くなれるためのツール、なんて地味な話をしてしまって、イベントの開催者側の意向にそぐわなかったかも知れません。
正直、ちょっと悩んだのですが、僕はこのイベントに参加する人(参加は有料)は割と頭がよくて深く考える人なんじゃないかなと勝手に考えて、ならば専門的な話で煙に巻いたり、瞬間芸的なインパクトで盛り上げたり、とかではなく、話を聞いてよく考えるとじわじわとありがたみがわかってくるような話にしようと思ったのです。
まあ、最初にちょっとしたデモをやったりして(あまりうまくいきませんでしたが)観客の受けを狙ったのは事実ですが(デモ中にステージ上をうろうろしていたら「落ち着きのない人」というコメントをいただきました)。

ちなみに、僕が講演で使ったWiiリモコンは以下の写真のもの(黒い方)ですが、リモコンの先端の横に装着されている黒い箱の正体は、赤外線LEDが発するIDを認識して、リモコンに伝達する装置です。
僕たちはこの赤外線IDを、リモコンを向けているスクリーンを識別したり、参加者の座っている位置を認識するために用いています。

wii_remote2.jpg

さて、このイベントでは、180ロデオと呼ばれる3分間のライトニングトークが売りでした。
基調講演などその他の講演も面白かったのですが、3分間のトークと比べると、(自分のを含めて)どれも冗長な感じがしました(もうこの手のイベントで1時間以上の講演は企画しちゃいけないと思います。特に2日目の講演というか雑談はこれが学会なら苦情が出るレベルです)。
このイベントに出て痛感したのは、短い時間でよい話ができるようなトレーニングをしなければならないということです。
それは、有名人でもない限り、自分の話を知り合い以外の人にじっくり聞いてもらえる機会はあまり多くはないのだから、その機会を無駄にしないために、簡潔で印象に残るいい話ができるスキルが必要だと思うからです。
僕は、このイベントの話を最初に聞いたときは、3分なんて初めの挨拶で終わっちゃうよ、と思っていましたが、全員の話を聞いて、それが間違いであると気づきました。
わずか3分間に、十分に内容のある話をデモを交えてわかりやすく話をすることのできる人はいる、ということがわかりました。
あと、即興ではないので、準備をしっかりしていない人の話はダメだということもよくわかりました(たとえ、システムの開発力が十分にあっても、ちゃんと話のできない人の話は印象に残りにくいです)。

とにかく、180ロデオは内容が盛りだくさんでとても面白かったです。
僕は審査員を頼まれたので、この参加者の発表を評価したのですが、この3分間でより多くの可能性を感じさせてくれたものに高い点を付けました。

何と言っても最も印象に残ったのは優勝したBlogopolisというものです。
これは見ていただければすぐにわかりますが、ブログのトピックを分類し、都市の景観(ブログがビルのメタファで表される)として可視化したものです(ちなみに、このブログを検索するとdesignとsoftwareの中間くらいにありました。まともなタグも何も付けてないのによく分類できたものです)。
僕はこの話を聞いて、「ああ、これが優勝だな」と思いました。

あと、モバイルプロジェクタとWiiリモコンを組み合わせて、どこでもアニメーションやお絵かきができるようにした仕組み(LEDにIDを付けて、タグとしてどこにでも貼り付けられるようにするともっと面白いと思います)や、位置情報付きの写真をイメージベーストレンダリングと呼ばれる手法で組み合わせ、過去の体験を想起できるようにしたバーチャルタイムマシンというシステム(MicrosoftのPhotosynthみたいなものですね)、さらに、運動を情報に変えるマスカラスというシステム(Wii Fitみたいなトレーニング支援だけでなく、新しいインタフェースに使えるといいですね。体力の程度に応じて得られる情報が異なるサービスとか。ちなみに、このシステムは、NHKのニュースでも取り上げられました)や、iPhoneを顔に持つ人型ロボット(iPhoneのカメラがディスプレイ側にも付いていると、もっと使えるのに)が面白いと思いました(結局、これらの発表は何らかの賞をもらったので、他の人の評価も似たようなものだったことがわかりました)。


司会の清水さんもよく場を盛り上げていました。
彼のような人がいるから、日本の若手エンジニアは未来への夢を共有できるのだなあ、と思いました。
僕のやり方とは全然違いますが、彼が、面白いことをいろいろと考えては、学生たちによい刺激を与えているさまを見ると、こういう教育もありだな、と思ったりします。
そんな彼が、僕の講演が終わったときに、「この人は僕にとって恩師と呼べるような人です」と言って僕を紹介してくれました。
その言葉が聞けただけで、僕はこのイベントに出てよかったと思っていますよ、清水さん。

投稿者 nagao : 22:52 | トラックバック

2009年09月26日

先駆者になるためにPart 2

ご無沙汰しております。
かなり間が空いてしまいましたが、このブログを再開したいと思います。


つい最近、ホンダが開発したU3-Xという電動一輪車を見て、とても感銘を受けました。
何より驚いたのは、1つの車輪(正確にはオムニホイールと同様に複数の小型輪を外周上に配置した車輪)のみを使って全方位移動を実現していることです。
通常のオムニホイールと違って、小型輪にも動力があり、大型輪と組み合わせて全方位への力を発生させるだけでなく、乗っている人の体の傾きを3軸角度センサーで検知して、倒立振子制御の仕組みでバランスをとって倒れずに走ることができるようです。

この仕組みは予想外でした。
僕は全方位移動には最低でも2輪が必要だと思っていたからです(球型の車輪1個を使うというアイディアも検討しましたが、実装はあきらめました)。
セグウェイ以降、移動体の倒立振子制御があたりまえになっているとはいえ、1輪さらに全方位でそれをやるとは、やはり日本の技術力は優れていると思わざるを得ません。
ちなみに、電動一輪車を体のバランスで操縦する仕組みは、ホンダが初めてではなく、すでにeniCycleというスロベニアのベンチャー企業が開発したものがあります。
eniCycleは屋外を走れますから、U3-Xより実用性は高いと思います。
しかし、どちらにより未来を感じるかというと、僕にとっては明らかにU3-Xです。


僕は以前に「日本の企業はもう先駆者にはなれないのではないかと不安になった」と書いたのですが、今回のホンダの発表を見て、やはり、日本企業のものづくりはまだまだレベルが高いなあ、と思いました。
以前に、デンソー総研というところに見学に行った時にもそう感じました。
そこでは、1本キャタピラの悪路走行可能なバイクや、手塚治虫の漫画「W3(ワンダースリー)」に出てくるビッグ・ローリー(わかる人います?)みたいな大型一輪車を作っている人がいて、やはり革新的なものを作れるのは、ものづくりが好きでそのための努力を惜しまない人なのだろうと思いました。


それにしても、一輪車はスペース的には最小でも、ある程度以上のスピードを出そうとすると安定性が悪いので、同様のホイールを前後に配置した全方位移動2輪車を開発してはどうでしょう。
これなら通常のバイクのように乗れますし、デザインもいろいろ工夫できます。
いわゆるニーグリップの姿勢をとれるようにすれば、人間と乗り物の一体感が増して乗り心地も良くなるでしょう。
省スペースや可搬性を気にするのでしたら、折りたためるようにすればよいでしょう。
あるいは簡単に分解できて、同じくホンダの開発した歩行アシストのように装着型マシンとしても使えるようにするのはどうでしょうか(2個の車輪を片足づつに固定できて、残りの部分を背負えるようにするといいです)。

とにかく、何が何でも1輪にしなければならない理由は特にないと思いますので、2輪にすれば、安定性が上がりますし、(人間の補助なしに)その場回転ができますから、僕たちのATのように自律走行も可能になるでしょう。


ちなみに、AT9号機は最近、以下の写真のように、オムニホイールをメカナムホイールに変更しました。
これによって直進の走行安定性が向上しました。

at9new.jpg

しかし、相変わらず段差を乗り越えられないので、屋外を走行することができません。
ホンダのU3-Xもそうですが、これは大きなデメリットです。

そこで、自転車の車輪と同じ、通常の空気入りタイヤで全方位移動ができる仕組みを試作してみました。
それが新しく開発したAT10号機です。

at10_1small.jpgat10_2small.jpg

ただし、これはまだプロトタイプの段階で、メカニズムの検証を行ってから、設計と製作をやり直す予定です。
このプロトタイプを作ったのは、今年の11月に開催される「つくばチャレンジ2009」というイベントに出場するためです。
これは自律移動ロボットのコンテスト(正確には、優勝者を決めるわけではないので、コンテストとは呼べません)で、オープン参加で、各参加者の開発したロボットに約1kmのコースを自律走行させて結果を公開するというものです。

ATは自律走行可能な乗り物ですから、このイベントに出ることによって、現在の技術水準がどの程度のものなのか評価することができます。
AT9号機は屋内走行専用だったので、屋外の自律走行はまだあまり経験がないのですが、位置情報の取得方法が大きく異なる点と、路面の段差を考慮しなければならない点以外の部分はそれほど大きな違いはないと思います(もちろん、自動車やバイクなどのATより速い移動体との衝突回避は大きな難問なので、ここでは考慮しないことにします)。

屋内外の自律走行が可能で、全方位移動による安全な衝突回避ができる、実用性の高い乗り物を作るために、これからも研究を続けていこうと思います。

投稿者 nagao : 15:26 | トラックバック