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2009年09月26日

先駆者になるためにPart 2

ご無沙汰しております。
かなり間が空いてしまいましたが、このブログを再開したいと思います。


つい最近、ホンダが開発したU3-Xという電動一輪車を見て、とても感銘を受けました。
何より驚いたのは、1つの車輪(正確にはオムニホイールと同様に複数の小型輪を外周上に配置した車輪)のみを使って全方位移動を実現していることです。
通常のオムニホイールと違って、小型輪にも動力があり、大型輪と組み合わせて全方位への力を発生させるだけでなく、乗っている人の体の傾きを3軸角度センサーで検知して、倒立振子制御の仕組みでバランスをとって倒れずに走ることができるようです。

この仕組みは予想外でした。
僕は全方位移動には最低でも2輪が必要だと思っていたからです(球型の車輪1個を使うというアイディアも検討しましたが、実装はあきらめました)。
セグウェイ以降、移動体の倒立振子制御があたりまえになっているとはいえ、1輪さらに全方位でそれをやるとは、やはり日本の技術力は優れていると思わざるを得ません。
ちなみに、電動一輪車を体のバランスで操縦する仕組みは、ホンダが初めてではなく、すでにeniCycleというスロベニアのベンチャー企業が開発したものがあります。
eniCycleは屋外を走れますから、U3-Xより実用性は高いと思います。
しかし、どちらにより未来を感じるかというと、僕にとっては明らかにU3-Xです。


僕は以前に「日本の企業はもう先駆者にはなれないのではないかと不安になった」と書いたのですが、今回のホンダの発表を見て、やはり、日本企業のものづくりはまだまだレベルが高いなあ、と思いました。
以前に、デンソー総研というところに見学に行った時にもそう感じました。
そこでは、1本キャタピラの悪路走行可能なバイクや、手塚治虫の漫画「W3(ワンダースリー)」に出てくるビッグ・ローリー(わかる人います?)みたいな大型一輪車を作っている人がいて、やはり革新的なものを作れるのは、ものづくりが好きでそのための努力を惜しまない人なのだろうと思いました。


それにしても、一輪車はスペース的には最小でも、ある程度以上のスピードを出そうとすると安定性が悪いので、同様のホイールを前後に配置した全方位移動2輪車を開発してはどうでしょう。
これなら通常のバイクのように乗れますし、デザインもいろいろ工夫できます。
いわゆるニーグリップの姿勢をとれるようにすれば、人間と乗り物の一体感が増して乗り心地も良くなるでしょう。
省スペースや可搬性を気にするのでしたら、折りたためるようにすればよいでしょう。
あるいは簡単に分解できて、同じくホンダの開発した歩行アシストのように装着型マシンとしても使えるようにするのはどうでしょうか(2個の車輪を片足づつに固定できて、残りの部分を背負えるようにするといいです)。

とにかく、何が何でも1輪にしなければならない理由は特にないと思いますので、2輪にすれば、安定性が上がりますし、(人間の補助なしに)その場回転ができますから、僕たちのATのように自律走行も可能になるでしょう。


ちなみに、AT9号機は最近、以下の写真のように、オムニホイールをメカナムホイールに変更しました。
これによって直進の走行安定性が向上しました。

at9new.jpg

しかし、相変わらず段差を乗り越えられないので、屋外を走行することができません。
ホンダのU3-Xもそうですが、これは大きなデメリットです。

そこで、自転車の車輪と同じ、通常の空気入りタイヤで全方位移動ができる仕組みを試作してみました。
それが新しく開発したAT10号機です。

at10_1small.jpgat10_2small.jpg

ただし、これはまだプロトタイプの段階で、メカニズムの検証を行ってから、設計と製作をやり直す予定です。
このプロトタイプを作ったのは、今年の11月に開催される「つくばチャレンジ2009」というイベントに出場するためです。
これは自律移動ロボットのコンテスト(正確には、優勝者を決めるわけではないので、コンテストとは呼べません)で、オープン参加で、各参加者の開発したロボットに約1kmのコースを自律走行させて結果を公開するというものです。

ATは自律走行可能な乗り物ですから、このイベントに出ることによって、現在の技術水準がどの程度のものなのか評価することができます。
AT9号機は屋内走行専用だったので、屋外の自律走行はまだあまり経験がないのですが、位置情報の取得方法が大きく異なる点と、路面の段差を考慮しなければならない点以外の部分はそれほど大きな違いはないと思います(もちろん、自動車やバイクなどのATより速い移動体との衝突回避は大きな難問なので、ここでは考慮しないことにします)。

屋内外の自律走行が可能で、全方位移動による安全な衝突回避ができる、実用性の高い乗り物を作るために、これからも研究を続けていこうと思います。

投稿者 nagao : 2009年09月26日 15:26

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